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集出版社主催「骨董 笑日幸美 大賞」集39号第3回作品発表!!

リストラを癒してくれた別府細工
吉田静司 

仕事中ケガで入院した。二ヶ月後、退院が決まった頃、会社総務部人事課から岐阜美濃工場への配置転換リストラの辞令が出された。定年間近の身には生活の為より田舎暮らしもいいかなと思い、妻に相談しOKの返事をした。
 あわただしく転居は九月末に決まり、引っ越しした。美濃地方は関東と違い町の音がしない、人が少ない、そして全てが何となくゆっくり動いていた。時に晒された古い建物の多い街は静かで落ち着いていた。また知らないことが沢山あった。珍しさもあり何でも見てやろうという気持ちでどこへでも行った。知らなくてもいいことがある中で、ロウ型鋳物の小さな工芸品が大垣城近くの収蔵館に並んでいた。その時は何の興味もなく、ただ見ただけだった。川の町並みが水も澄んで流れ美しかった。
 その後、商用で滋賀県長浜まで行った折、小さな三足燭台を骨董店でみつけ、手に取って見せてもらった。店主に値を聞くと「五万円」とのこと。手持ちもなかったので、また今度来る時までと言いつつその時は帰った。もう一度見せて欲しいと思うことが出来れば買ってもいいなと思った。
 翌年、国道の日陰の所に雪がまだ残っている頃、また商用で彦根に行くとこがあり、早々に仕事を切り上げ長浜まで足をのばし、昨年伺った骨董屋へ行った。顔を覚えていてくれた。関東からの転勤の話をしたので忘れなかったのかもしれない。景気がなかなか良くならない話などをしながら、燭台を再度見せてもらった。店の主人は「こんな物を買う人はほとんどいないですよ」と言っていた。また「狭い地方で作られて物なので世間では知られていないし、人気がない。それにローソクを使うことがなくなってしまった」とも言っていた。「まあ棚のアクセサリーくらいかな」と説明してくれた。そして、江戸時代末か明治期の美濃地方の金属工芸品で、ロウで型を作り、そこに銅を流し込んで作られたようだとも言っていた。美濃地方で作られ、滋賀県まで流れ着き、埃にまみれ置いてある品は何か寂しげに見えた。古びて時代遅れになり、使い様がなくなった物が、リストラされた自分と重なって見えた。買って岐阜転勤の思い出にしようと思った。
 店主の言うように狭い地区で作られた品、そして数少ない品のように思え、価値は全く判らない。それゆえ、何か作風に面白味があるのではないかと思った。手に取るとそれなりに持ち重りがして、きっちり正確には出来てないが、ゆとりのある形になっている。完成されていない美しさがあるようにも見える。地方の時代がかった店にぽつねんとあるのは自分の今までと重ねて何か心癒される思いがした。私が感傷ぬきに大事にしようと思った。
 その後、岐阜市歴史博物館で、仏教系のイベントがあり、行き時間があったので館内を見て歩くと、長浜で手に入れた同じような物がガラスケースの中に数点あった。別府細工と記してあった。簡単な説明プレートに鬼面の舌が長くのびて三足になるようになっている。買った品はコピー品、偽物でも良いとその当時思ったことが思い出された。クリスマスの時、ローソク立てに使っている。特別古い品でもなくトロトロ感の持ち重りのする感じが良かった記憶がよみがえってきた。
 骨董の値段がわかる『集』をほとんど買って調べたが二回しか紹介されていないことが判り、知名度のないことにがっかりしたが、何か安心もした。
 数年たって長浜の店主へ電話をしたが、主人は亡くなっていた。長浜の冬の街の佇まいが目に浮かび、何か懐かしさが思い出された。
 岐阜で定年をむかえ関東に帰って来た。上野の博物館に同じ別府細工の根付が郷コレクションの中にあることを後で知った。
 知らなくても良いことの中に、骨董の懐かしい美しさ、珍しさ、持つことの何か隠れたステータス感を味わえる喜び、そして物を介してつながる人の縁がある。それが判っただけでもリストラ転勤は私にとって良かったと今は納得している。
 長浜の店の後を継いだ若主人に改めて今度お礼に行く旅行計画を立てている。当時の思い出話と会えることが楽しみの一つになっている。
 地方の歴史とその地にしかない、知っている人は知っている物、今はもう作られなくなった物、時代に埋もれてしまった物、そんな物に人に会う楽しみを加えて夢を見ている。そして百何十年前に作られた品物の存在力、今につながる生命力に癒されている自分を知る。岐阜で退職して二年になる。今、この還暦を過ぎた年になり、古い物の味がほんの少し判るような気がしてきた。


骨董界から悪徳業者を一掃すべし
N 
世間には贋物を高値で掴まされ泣いている人が大勢います。贋物を売ることは詐欺罪です。骨董界には贋物を買う方が悪いという間違った考え方がありますが、それでは善良な素人は救われません。これを放置しておいては、骨董界の明日はありません。悪徳業者一掃のために次の提案をします。
(一)品名
(二)製作年号
(三)製作者名(判らない場合はその由を明記する)
(四)傷・補修の有無
(五)売り主の氏名・住所・電話番号
以上を明記したラベルを添付する。
 このことが定着すれば詐欺商売の抑制にかなり有効だと思います。貴出版社も骨董界の発展のために、このことに積極的に取り組まれることを望みます。『集』は骨董界、骨董蒐集家に大きな影響があります。兎に角、悪徳業者を一掃し、贋物を掴まされて泣く人のない、明るい骨董界の将来を望みます。



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